TRANBIコンサルティングチームの安田と申します。

薄暑の候、皆様におかれましても未曾有の災禍の中、大変なご苦労をされておられることと案じております。少しでもお役に立てるよう、今後月次を基準として、M&Aや経営に関するレポートを作成し、皆様にお届けしてまいります。


7月分レポートは、5月に実施した経営者向けアンケート回答結果及び2020年1月〜5月までのTRANBI上でのM&A交渉データの分析結果をお送りします。


▼目次

 (1) 経営者アンケート 〜経営者が感じる経営課題と経営戦略〜 

 (2) M&Aを活用した異業種参入動向 〜卸売・小売業編〜 

5月分のアンケートからは、コロナウィルスで益々業界の先行きが見えづらくなり、経営の安定化のために事業領域拡大(多角化)、事業規模拡大、経営の効率化を考える経営者の姿が顕著に見られました。特に「事業領域拡大(多角化)を考える経営者がこれほど多いこと」が、注目すべき点かと考えております。

【趣旨】TRANBIユーザーの経営課題は何か?
【質問】※趣旨該当の一部質問
 Q1:現在または近い将来発生すると考えている経営課題
 Q2:経営課題への対策
【募集期間】2020年5月18日~22日
【依頼対象】TRANBIユーザー(個人・法人)のなかで経営レベルの役職の方
【有効回答】72件(集計対象は68件)

【Q1.現在または近い将来発生すると考えている経営課題】

※その他自由記入:「海外進出」「単一業種での限界、今回の様な予想外なことが起こったときの備え」「今回のコロナ禍により一層仕事が増加する一方、内部体制の充実が追い付かない。」

・「業界の変化」を経営課題として挙げている経営者が多くみられます。
・自由記入欄にあるように、「単一業種の場合は予想もしない急激な変化に対応しにくい」事もあり、多角化の必要性を感じられている方が多いと考えられます。

▼Q1.経営課題|業種別

※N=68とサンプル数が少ないため、統計的な信頼性は低い前提。

一定の回答数を担保するため、全体の30%以上回答者がいる項目のみ詳細化


・コロナウィルスによる影響が報道されている「ホテル・旅館業」「飲食業」は全ての方が需要の減少を課題に挙げています。

・「美容サービス業」「教育業」「生活関連サービス業」も需要の減少を全ての方が挙げていることから、更に詳しく調査する必要がありそうです。

▼Q1.経営課題|売上規模別

・需要減少の課題感は、どの売上規模でも見受けられます。
・売上規模が大きいほど課題範囲が広がっているように見受けられます。大規模企業ほど事業領域が広く、異なる課題が発生しているということなのでしょうか。


【Q2.経営課題への対策】

※★が付いている選択肢は、事業規模・領域拡大などM&Aや業務提携など他社との連携が一手として考えられるもの

・別業界への参入を考えている経営者が6割近くみられ、「事業の選択と集中」など経営の効率化も多くの方が検討しています。
・事業領域拡大には、経営を効率化しないと現在の人員では追い付かないことも考えられます。これまで考察してきたように「業界の変化を感じている」「単一業種での限界を感じている」ために別業界への参入を考えている因果関係が想像できます。

▼Q2.経営課題への対策|経営課題別

「別業界への参入を考えている」を選んでいる方は、経営課題としては業界の変化を挙げています。また、「仕入先」「自社の技術」「人財面」を課題に挙げている方も別業界に参入しようとしているようです。

▼Q2.経営課題への対策|経営者の年齢層別
・別業界への参入や海外進出に対して、40代・50代の比較的若手の経営者が考えているようです。事業を大きく転換するには体力や長期的な取り組みが必要と考えるからでしょうか。
・役員や事業責任者の採用は60代・70代の経営者の方が比較的多く考えているようです。このアンケートに回答しているのは攻めの経営を実践している方が多く、それを実現するために若くて実行力のある参謀クラスを採用したいと考えているということでしょうか。

▼回答者の構成比(業種、設立年、前年度売上、社員数、回答者役職、代表年齢、現代表別)集計対象:68


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(1)の経営者アンケートで事業領域拡大(多角化)を考える経営者の姿が顕著に見られたことをうけ、(2)ではM&Aを活用した異業種参入動向のレポートをお送りします。
中でも7月分は、TRANBI法人ユーザーの中で最も会員数が多い「卸売・小売業」の動向についてお送りいたします。

直近の交渉・成約データより、以下の動向が見られました。


(1)卸売・小売業の案件は全ての業種の買い手の交渉数上位トップ5に入る人気業種であり、中でも「卸売・小売、製造、旅客・物流」の買い手から特に関心が高い

(2)卸売・小売業が買い手の場合は、「製造・物流」への興味関心が高い

(3)成約案件に限定すると、成約数が多いのは「卸売・小売、情報通信」


こちらの動向に関する考察は後述しております。

【趣旨】卸売・小売業の直近のM&Aの動向・特徴(M&A親和度の高い業種)

【集計対象】2019年12月~2020年5月の成約案件及び2020年1月〜5月に交渉が実施された案件

卸売・小売業が、売り手として交渉が行われた案件の業種別関係値を見ました。

特に高いのは「卸売・小売」「製造」「旅客・物流・倉庫」のようですが、他業種も広く全業種平均値前後の関係値が見られ、様々な業種が卸売・小売業に対するM&Aに興味を持つようです。


更に、卸売・小売案件の、買い手の業種別に成約件数を確認しました。

成約案件が多いのは「卸売・小売」「情報通信」が買い手のケースですが、「製造」「美容サービス」といった別業種が買い手の場合でも成約に至ることがわかりました。交渉段階で登場する「物流」も十分シナジーが考えられるため、成約に至るまでにサポートが入ることで増加するかもしれません。

卸売・小売業が、買い手として交渉が行われた案件の業種別関係値を見ました。

特に高い関係値なのは「製造」「卸売・小売」「農林」「物流」のようですが、卸売・小売業が売り手の時と同様、他業種も関係値は比較的高く、幅広い業種の買収に興味を持つようです。


卸売・小売業が、買い手として成約した案件数を確認しました。

成約案件が多いのは「卸売・小売」「情報通信」が売り手の案件ですが、卸売・小売業が売り手の場合と同様、「製造」「美容サービス」などが売り手の案件でも成約に至ることがわかりました。

横展開のシナジーやバリューチェーン上のシナジーが発生する業種に対するM&Aが成約するようです。

この動向から卸売・小売業が絡む異業種間M&Aのシナジーを以下考察いたしました。

卸売・小売業同士の場合は、横展開のシナジーが狙えます。
お互いの製品群と顧客層がクロスでフィットすることや、店舗とECの組み合わせなどのクロスチャネルの相互補完の可能性もあります。また売上向上だけでなく、倉庫・IT等のインフラ共通化による大幅なコスト削減も図れます。

異業種の「製造、物流」とのM&Aの場合では、バリューチェーン上のシナジーが狙えます。
・製造業とのM&Aでは自社独自の商品開発に取り組み脱コモディティを図れます。
 製造業側から見ると「自前の販路としての活用」の他、顧客接点の確保により販売データ獲得やテスト販売など「マーケティング機能の強化」が狙えます。
・物流業とのM&Aでは物流の柔軟性を高めることで競争力向上が図れます。
 物流業側から見ると日々動く配送網に自社販売商品も乗せられ、利益率改善が狙えます。


また、「情報通信業」とのシナジーは、システム開発力の獲得によるEC化への踏み出せることなど様々考えられますが、詳細は次回レポートにてご報告します。

今回は「卸売・小売業」が関わるM&A分析を中心としたレポートをお届けいたしましたが、次回は次いでTRANBI会員数が多い「情報通信業」が関わるレポートをお届けしたいと考えております。


2020年7月号レポートに対する感想を以下リンクよりお寄せください。「この部分をもう少し深掘りして知りたい」「この業種について同様の分析が欲しい」などのご要望もお待ちしております。

【アンケートURL】